クランクアップタワーのワイヤー交換

決 断

 愛知タワーのワイヤー交換の目安は、10cmの間に素線切れが10本ある場合とされている。
僕は毎月始めにタワーのウインチ、ガイドローラーへの給油を行い、そのつどワイヤーとリミットスイッチの点検も行っている・・・ちょっとやり過ぎの感じもするが安全のためには欠かせない作業だ。
 建塔から18年が過ぎ、さすがに昇降部分で一番下のユニット(2段目)を吊っているワイヤーにも素線切れが目立つようになってきた。 無理も無い、この間一度もワイヤー交換を行っていないのだから。

 愛知タワーの規定によれば、ワイヤー10cmの間隔内に素線切れが10本あれば交換となっている。
当局のタワーは24m型だが、実際には9割以上はせいぜい15mまでしか上げることが無いためか、素線切れもウインチ側の比較的短い区間だけに留まっており、そのほかの部分は3段〜4段目(これらはダブルワイヤー)も含め全く認められない。 また、素線切れの状態も10cmの間隔内なら3〜4本程度。
 念のため、一番ひどい部分を写真にとって愛知タワーの社長に見てもらうと、「この状態ならあと10年は持つので全く交換の必要がない」とのこと・・・・とは言え、もう18年も過ぎているので十分に元は取っている。 そんなわけで、やはり交換することにした。

万一、この記事をご参考に同様の作業をされる場合はご自身の責任で作業を行ってください。
また、危険性を伴いますのでいかなる質問にもお答えできません。
同じ事をされて万一、何らかの事故に遭われても当方では一切の責任も負いません。(当たり前の話ですが)
少しでも不安のある場合は作業を行わない事をおすすめします。


ワイヤー入手

 今回交換するのは2段目(最下段)のワイヤーのみ。
先に書いたように、3〜4段目はダブルワイヤー、つまり四角のタワーユニットの対面を利用して2本のワイヤーが掛かっている上に、素線切れは全く認められない。
早速、愛知タワーに注文するとすぐに直径10mmのSUSワイヤーが届いた。

交 換

 2段目ユニットのプーリー交換を一人で行った経験があったので、今回のワイヤー交換も一人で出来なくは無いが、やはり作業の確実を期すため今回はローカールの助けを得ることにした。 ただ、人数が多くても煩わしいので1人だけ頼んだ。
 作業そのものは簡単で(ただし、安全には十分配慮して)、ワイヤーの取り外しまではローカルが来るまでに一人で完了させておいた。 手順は次のとおり。
※自身での交換作業をお勧めしているわけではありません。 少しでも自信の無い方は業者に依頼してください。
  同じ方法で作業して何か事故があっても当方は一切責任を負いません。 もし同様の作業を行う場合、あくまで自己責任で行ってください。

用意するもの:
10cm角の丈夫な角材×2〜3本、15m程のロープ、割りピン、プライヤーかペンチ×2、プラスチックハンマーか木製ハンマー、軍手、脚立、レンチセット、プラスドライバー、二硫化モリブデングリス(僕は歯ブラシでグリスを伸ばしてます)

まず行うこと:
ワイヤーの取り付け状態を確認しておく。 まあ、小まめにメンテナンスしていれば改めて確認などしなくても、ワイヤーがどうセットされているか位は把握しているはずです。 ワイヤーの取り回しを間違うと最悪、タワーやワイヤーを破損する可能性があるので、これには特に注意が必要。
これが確認できたら、タワーの安全柵とウインチの蓋(4本のネジでとまっている四角い板)を外す。

1. タワーを上昇させ、2段目のユニット底面と1段目のブレースの間に15cmほどの空間が出来る位置で停止する。
2. 用意した木材を写真.1のようにタワーにセットする。 これはプーリー交換のときと同じ要領。
我が家のタワーは周囲にスペースが無いのでこのようなセット方法で3本使ったが、木材をハの字状にセットすれば2本でも強度は確保出来るようだ。(ご自身の判断で・・・・)
3. タワーを下降させると2段目の底が木材に当たり、ワイヤーが緩んでタワーは下降しなくなる。(写真.1)
4. 十分ワイヤーがたるんだらモーターを停止。
5. ウインチに巻かれたワイヤーをたるませて、ウインチドラムからワイヤーを取り外す。
6. 1段目ユニット上部にあるワイヤー留めの割りピンを引きぬき、ワイヤーを吊っているピンを引き抜いてワイヤーを取り外す。(写真.2)  このとき、ワイヤーの端末処理部分(シンブル)と新しいワイヤーのウンチ側を繋いでおき、ウインチ側から引き抜いてやれば古いワイヤーと新しいワイヤーの交換が一気に出来るようにも思えるが、1段目上部についているプーリー部分で古いワイヤーの端末処理部分が引っかかって通れない。(プーリーを外す必要があるかも)
そこで、ワイヤーはウインチ側と反対側の両方からタワー内部に落としこんで、タワーの底の隙間から引き抜いた。
7. タワー1段目の高さの2倍位のロープを用意し、これを1段目ユニット上部についているプーリーを通してタワー内側にたらしておく。(ロープは2段目ユニットのプーリー付近までたらす)
8. ワイヤー留めのピンに新しいワイヤーを通してセットし、新しい割りピンを取り付ける。
9. ワイヤーのウインチ側をタワーの底、2段目ユニットのプーリー付近まで落とし込んでいく。
10. 先に垂らしておいたロープでワイヤー端末処理部分を結わえる。
11. ロープを引きながらワイヤーを引き上げてゆくが、ワイヤーは10mmの径があるのでプーリー部分で引っかかる。 これは仕方ない・・・・この部分は手でガイドしてプーリーを通すが、プーリーを外す必要は無く、簡単に通せる。
あとはどんどんロープを引いてワイヤーをウインチ側に引っ張っていく。
要注意なのは、通過した3個のプーリーに確実にワイヤーが掛かっていることを確認すること。
12. ウインチ.ドラムにたっぷりグリスを塗布する。
13. ワイヤーからロープを外し、ウインチドラムの左端に開いたワイヤー固定穴にワイヤーを差し込んで左にスライドさせる。
14. 脚立を用意し、一人は脚立上に上ってワイヤーを上向きに引っ張る。
もう一人は左手を昇降スイッチに置き、右手にハンマーを持ってスタンバイする。
15. 昇降スイッチのUPを押してタワーを上昇させるが、この間、脚立に上がった人はウインチと綱引きの要領でワイヤーを引っ張り上げるようにしてワイヤーが弛まないようにする。
ウインチ側の人は、ウインチのワイヤーが巻き乱れるようならハンマーで軽く叩いて巻き乱れを阻止する。
勿論、緊急時にはウインチを停止させる。
※ワイヤーがプーリーに掛かっているかは常時確認する。
16 ワイヤーがピンと張り、タワーが上り始めたら上昇を停止させる。
17. 挟んであった木材を取り除きタワーを下降させる。
18. リミットスイッチでタワーの下降が止まったら、ドラムに開いたワイヤー留め穴が真下を向いて止まっているか確認。
位置がずれている場合は、リミットスイッチのネジを緩めて上下にスライドさせて穴が真下で止まる位置にリミットスイッチを固定する。 なお、愛知タワーの最下段と最上段のリミットスイッチは安全のため2段構えとなっているので、下側に付いているスイッチは少し離してセットする。
19. 念のため昇降をテストし、ウインチ蓋、安全柵を取り付けて終了。

写真.1 木材をセットした様子 写真.2 ワイヤー留め 写真.3 ワイヤー交換後 写真.4 上端リミットスイッチ

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